きらびやかな物語の裏で
ネオヒルズ族の成功談がテレビで流れていたころ、その下ではずっと多くの若者が消耗していました。「誰でも簡単に月収100万円」「自由なライフスタイル」という言葉を信じて飛び込んだ人たちを待っていたのは、構造的な罠でした。
借金で払う「自己投資」
数十万円から100万円を超える塾やコンサルの代金を、「自己投資」の名目で、カードのショッピング枠や消費者金融から借りて払う。当時、こうした勧め方は珍しくありませんでした。
事実国民生活センターは、情報商材の典型的なトラブルとして、高額な契約をクレジットカードや借金で支払うよう勧められる事例を挙げ、借金をしてまで払わないよう注意を呼びかけています。
友人と家族を失う
成功するためには、SNSで豪華な生活を演出し、次の客を集めなければならない。そう教えられた若者は、友人や家族に商材や塾を勧め始めます。連鎖販売に近いこの売り方は、周囲からの信用を確実に削りました。「ネガティブな人とは縁を切れ」という教えが、孤立をさらに後押ししました。
残ったもの
幹部やトップのアフィリエイターは大金を手にして抜けていきました(あるいは税金の問題に巻き込まれました)。一方、末端の若者に残ったのは次のようなものです。
- カードローンやリボ払いの返済
- 何も身につかなかった数年間の職歴の空白
- 知り合いに勧めてしまったという負い目
- 「自分の努力が足りなかった」という自己否定
レールから外れた若者たち
彼らの多くは、もともと恵まれた場所にいたわけではありません。1990年代から2000年代にかけて、「いい大学を出ていい会社に入れば一生安泰」という道筋は崩れました。就職氷河期で正社員になれなかった人、派遣やアルバイトを転々とした人、手取りの少なさに未来を描けなかった人。
そこへ、シャンデリアと高級車を背にした誰かが現れて言います。
まだ真面目に会社員なんてやってるの?
学歴も職歴も関係ない。ネットなら誰でも一発逆転できる。
普通のルールでは勝ち目がないと感じていた人にとって、それは暗闇に垂れた一本の糸に見えたはずです。だから、借金をしてでもつかもうとした。
論評ブランドのスーツも、尖った靴も、派手な内装も、見方を変えれば、社会からはじき出された若者が自分を大きく見せるための威嚇でした。ネオヒルズの狂乱は、笑える喜劇であると同時に、停滞した時代が生んだ若者たちの自傷にも見えます。