何者にもなれないまま30歳を迎える
20代の後半、「このままでいいのか」という焦りが頂点に達したとき、目の前に一発逆転のカードを差し出されたらどうするか。毒だと分かっていても手を伸ばす人が出るのは、意志の弱さというより構造の問題です。
スキルも実績もないまま30代に入ることへの恐怖。情報商材のビジネスは、その恐怖を正確に狙っていました。
二択の幻想
SNSやセールスページは、人生を極端な二択として見せました。
| 見せられた「勝ち」 | 見せられた「負け」 |
|---|---|
| 月収100万円 | 手取り20万円 |
| 好きな時間に好きな場所で | 満員電車と残業 |
| 20代で経済的自由 | 定年まで社畜 |
この二択を毎日見せられると、こつこつ働くという普通の選択肢が「負け」に見えてきます。地道に技術を身につける、少しずつ給料を上げていく、という中間の道が視界から消えるのです。
リスク感覚がまひする
30歳で詰むくらいなら、借金してでも一発賭けたほうがまし。
追い詰められると、人はこう考え始めます。損失の見込みが、恐怖によって過小評価される。こうして高額な塾、消費者金融、無謀な賭けへ踏み出していきました。
恐れていた場所へ落ちる
皮肉なのは、一発逆転に敗れた人の多くが、いちばん恐れていたはずの場所に真っ逆さまに落ちたことです。何も身につかないまま30代を迎え、しかも借金を背負っている。逃げようとした「底辺」より、さらに条件の悪い場所でした。
焦りは今も売られている
ショート動画、副業、AI、投資。2020年代にも「簡単に稼げる」の波は形を変えて押し寄せています。人間の焦りにつけ込む商売の根っこは、10年前と変わっていません。
論評二択を突きつけられたら、まず「その二択を作って得をするのは誰か」を考えてみることです。たいていの場合、恐怖を売る人と、出口を売る人は同じです。