「ネオヒルズ族」という呼び名
2000年代半ばの「ヒルズ族」は、六本木ヒルズに本社や住まいを構えたIT企業の創業者たちを指す言葉でした。上場企業の経営者、株式市場、M&A。良くも悪くも、そこには実体のある会社がありました。
それから約10年後の2013年前後、テレビや週刊誌が「ネオヒルズ族」という言葉を使い始めます。指していたのは、インターネットで情報商材やアフィリエイトを扱い、若くして大金を手にしたと称する人たちでした。高級車、タワーマンション、机に積んだ札束。彼らは「お金持ちであること」そのものを商品の看板にしていました。
事実その象徴とされたのが与沢翼氏です。2013年1月に著書『秒速で1億円稼ぐ条件』を出し、バラエティ番組や雑誌に次々と登場しました。本人も「ネオヒルズ族」を自称していました。
旧ヒルズ族との違い
| ヒルズ族(2000年代) | ネオヒルズ族(2010年代) | |
|---|---|---|
| 主な事業 | ポータル、ネット証券、ITサービス | 情報商材、高額塾、アフィリエイト |
| お金の集め方 | 株式市場・投資家 | 個人のクレジットカードとローン |
| 見せていたもの | 企業価値、時価総額 | 私生活の豪華さ |
| 客 | サービスの利用者 | 「自分もああなりたい」若者 |
違いは、何を売っていたかにあります。旧ヒルズ族は少なくともサービスや株を売っていました。ネオヒルズ族の多くが売っていたのは、「自分もこの生活に入れるかもしれない」という期待でした。
なぜ2010年代前半だったのか
いくつかの条件が同時にそろっていました。
- 決済の手軽さ:インフォトップのような情報商材ASPや決済代行を使えば、個人でもカード決済で数万〜数十万円の商品を売れるようになっていた。
- 集客の手軽さ:アメブロ、メルマガ、Facebook、そして初期のYouTube。広告費をかけずに大勢へ届く道具がそろっていた。
- メディアの需要:「20代で年商◯億円」は視聴率の取れるネタだった。テレビに出たこと自体が、次の集客の信用材料になった。
- 若者の閉塞感:就職氷河期の後遺症が残り、正社員の椅子は少なく、給料は上がらない。一発逆転の物語に飛びつく理由が十分にあった。
この時代を振り返る理由
ネオヒルズ族は2014年を境に急速に姿を消しました。けれど、彼らが組み上げた「不安をあおり、成功の演出を見せ、高額な商品を売り、買った人に次を売らせる」という型は消えていません。YouTube、投資、AI副業と、看板を替えながら今も動いています。
このサイトは、その型がどう作られ、何を残したのかを、当時の空気を知る側から記録するための場所です。
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