PART 3 売られていたもの

虚飾のマーケティング

シャンデリアとブランドスーツ。ホストクラブのようなオフィス、外車、腕時計。あの演出は何のためだったのか。

シャンデリアとホストクラブの壁紙

ネオヒルズ族のオフィスと聞いて多くの人が思い出すのは、一等地のビルに構えた、黒と金を基調にした部屋でしょう。天井のシャンデリア、黒革のソファ、壁に並ぶ高級酒。IT企業というより、夜の店のVIPルームに近い内装でした。

駐車場には高級外車。机の上には札束。それを撮った写真がブログやSNSに流れ、「この生活を手に入れたくないか」という一文が添えられます。

あの内装は何のためだったのか

論評あの空間には、少なくとも三つの役割があったと考えられます。

1. 成功の見本

彼らの多くは、もともと上場企業の幹部でもエンジニアでもありませんでした。だから思い描く「成功者の部屋」は、シリコンバレーの簡素なオフィスではなく、繁華街の高級店そのものだった。そのイメージを隠さずに形にしたのがあの内装です。

2. 現実感を麻痺させる舞台

セミナーや個別相談で客を招き入れたとき、薄暗い部屋に浮かぶシャンデリアと大音量の音楽は、「ここは日常とは違う世界だ」と感じさせます。警戒心が緩んだところで、数十万円の契約書が差し出されます。内装は営業の道具でした。

3. 長く続かないと分かっていた気配

研究開発にも人材にも投資せず、手元の現金をすぐ目に見える贅沢に変える。どこか、明日のことは考えないという刹那的な空気がありました。

ブランドのスーツという鎧

服装にも型がありました。光沢のある黒や紺のスーツ、ボタンを大きく開けたシャツ、つま先の尖った革靴、文字盤の大きな高級腕時計。腕を組んで時計が見える角度で写真に収まるのがお決まりでした。

スーツは礼儀のための服ではなく、中身の薄さを覆い、見る人の目をくらませるための衣装だったと言えます。シャンデリアのある店でスーツを着て高額なボトルを売るのと、シャンデリアのあるオフィスでスーツを着て高額な教材を売るのと。並べてみると、構造はよく似ています。

見栄の内訳

見せていたもの実際によくあった姿(論評)
一等地のオフィス家賃が払えなくなると短期間で退去
並んだ高級外車リースや借り物。契約が切れれば返却
「月収1000万円」画面上の数字。現金の裏付けは不明
「自動で稼げるシステム」安く作られたPHPスクリプト

2014年に与沢氏が告白した内容(高級車の売却、住宅の解約、六本木オフィスの退去)は、この演出の裏側が公に見えた瞬間でもありました。