PART 3 売られていたもの

24万円の中身

高額塾という空箱。マインドセット、検索すれば分かる手順、そして同じ塾を次の人に売る方法。

24万円で何が手に入ったのか

当時の高額塾や高額商材は、20万〜30万円前後の価格帯が定番でした。「ネットで自由に稼ぐ方法」を学べるはずの塾。では、その中身は何だったのでしょうか。

論評以下は、当時売られていた高額塾・商材の典型的な構成を一般化したものです。中には実務的な内容を含むものもあり、すべてがこうだったわけではありません。

典型的な中身

前半:マインドセット

教材の大半を占めたのが「心構え」でした。成功者の考え方を持て、毎日10時間作業しろ、否定的な友人とは縁を切れ、成功した未来を強く思い描け。読む側は熱量に押され、「この人は本物だ」と信じ込んでいきます。

後半:ネットで調べれば分かる手順

具体的なノウハウとして書かれていたのは、無料ブログの開設方法、メルマガスタンドの登録方法、そしてコピーして使える「あおり文」のテンプレートでした。

結論:同じ塾を次の人に売る

最後に明かされる「稼ぐ方法」は、多くの場合こうです。ブログを作り、「月収◯万円達成」と掲げ、メルマガに誘導し、自分が買ったこの塾をアフィリエイトする。1件売れれば10万円前後の報酬が入る、と。

空箱の売り渡し

塾長   … 24万円の「箱」を作る
1期生 … 24万円で箱を買う → 中身がないと気づく → 元を取るため2期生に売る
2期生 … 24万円で箱を買う → 3期生に売る
……

手に入ったのはプログラミングの技術でも、Webデザインでも、SEOの知識でもありませんでした。次に24万円を払う人を探すための営業マニュアルです。そしてこの連鎖が、前の章で見たような自前ASPの上で高速に回っていました。

真面目な人ほど潰れた

受講者の多くは、ITの技術が身につくと信じて、カードのショッピング枠や消費者金融で代金を払いました。渡されたのは「人に同じものを売れ」という指示だけ。真面目な人ほど「こんなことはできない」と罪悪感で手が止まり、借金だけを抱えて静かに去っていきました。

逆に、割り切れた一部の人は師匠をまねて自分の塾や自前ASPを立ち上げ、次の予備軍になりました。

事実国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた「情報商材」に関する相談は、2013年度の872件から2017年度には6,593件へと、4年で7倍以上に増えています。安い商材から高額なコンサルやサポート契約に誘導される、カードや借金での支払いを勧められる、返金保証をうたいながら応じない、といった手口が典型例として挙げられています。

年度情報商材の相談件数
2013872
2014999
20151,754
20162,965
20176,593

ネオヒルズ族が表舞台から消えた後も、被害の相談はむしろ増え続けていました。手口が広く薄く、一般の人へ降りていったことを示す数字です。

出典