「自分のアフィリエイトセンターを持て」
2010年代前半から中盤にかけて、情報商材の業界では「◯◯アフィリエイトセンター」という名前の自前ASPが次々に立ち上がりました。ASPはアフィリエイト・サービス・プロバイダの略で、商品を売りたい人と紹介したい人を仲介し、成果を計測して報酬を払う仕組みです。
本来なら大手のASPを使えば済む話です。それでも自前で作る人が後を絶たなかったのには理由がありました。
自前で作った理由
論評当時の業界の空気から見える動機は、おおむね次の三つです。
- 審査を避けたい:大手ASPには一応の審査があり、誇大な表現や返金条件にチェックが入る。自前なら何を売っても止められない。
- 報酬を自由に設定したい:「1件紹介で1万円」「報酬率80%」といった極端な条件で、アフィリエイターを一気に囲い込める。
- 「胴元」になりたい:師匠が胴元として稼いでいるのを見て、自分も同じ立場になれば勝てると考えた。
道具も手近にありました。アフィリエイトセンターを構築できるというPHPスクリプトが、数万〜数十万円で売られていたのです。レンタルサーバーに置けば、その日から自分がASPの運営者になれる。少なくとも、そう見える状態にはなれました。
開設から閉鎖までの典型的な流れ
- スクリプトを買い、レンタルサーバーに設置する。
- 高額報酬をうたって、メルマガやSNSでアフィリエイターを募る。
- 大型の「ローンチ」を打ち、数週間で集中的に売る。
- 報酬の支払い時期(翌月末や翌々月末)が来る。
- 手元に現金がない。返金請求、カード会社のチャージバック、不正な成果の発覚が重なる。
- 「システムの不具合で集計データが失われた」と告知するか、何も言わずにサイトを閉じる。
論評すべての自前ASPがこうだったわけではありません。けれど、「立ち上がったと思ったら数か月で消えていた」という経験は、当時アフィリエイトをしていた人なら珍しくなかったはずです。
現金が残らなかった理由
売上が立っても、現金は残りませんでした。集まったお金はオフィスの家賃、高級車のリース、次のプロモーションの広告費に回り、報酬の支払いは「次の売上」で埋める前提になっていました。新しい客が入り続ける間だけ回る、自転車操業です。
客が途切れた瞬間、データベースに積み上がった「未払い報酬」と、購入者からの「返金請求」だけが残ります。システムを作るのは簡単でも、画面に表示した報酬額を本当に払えるかどうかは、誰も設計していませんでした。